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光勝寺の狸伝説

誓敬寺の御住職が笠をさして"の門を出てきました。12月の寒い晩で、もう2.3日するとお寺では報恩講が始まるのでした。一方の手に花バサミを持っているのは、報恩講の花を活けに行っての帰りがけと見えます。ご住職は寺の門を出るとゴホンと一つ軽い咳をしました。雨がばらばらと降っています。冷たい雨でした。南町の角の家の薄暗い掛け行灯が一つ、さびしくともっています。寺の横の小溝にコボコボと音がしているのは雨水が流れていくのでしょう。ご住職はすぐ向かいの自分の寺に帰っていくのです。しかし、光勝寺の門口まで来たところで、ふと気がついてみると、自分のさしている蛇の目傘が、何時もより5.6倍も重くなっているのでした。ご住職はぴたりと足を止めました。「銀杏の枝が引っかかったかな。」こう思いながら静かに上を見たのですが、銀杏の枝は高いところに知らぬ顔をしています。「銀杏のえだでもなしと・・・」チョッと小首を傾けました。するとふと胸に浮かんだことがあります。ご住職は腹の中でくすりと笑いました。そして盛っている傘をぐるりと一まわり回してみました。すると傘の上から自分の目の前に、ダラリと一尺ほども下がっているものが目に入りました。「上に乗っておるわい」御住職の一方の手が、そっとそれに伸びていきます。花バサミを持った手です。下がっているものは動きもしません。チョキ。花バサミの軽い音がしました。そのとたん、キャン。というけだものの声がしました。「あっはっは。狸の奴が。」御住職はこの銀杏の木の傍では時々狸が出ると聞いていたのでした。

*1.誓敬寺:真宗、元延岡中町の東の端にあった。

光勝寺

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