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祖母山大蛇との伝説

昔日向高千穂に三田井氏という豪族があった。この三田井氏の祖は緒方政次で、その父親維基については次のような伝説がある。
昔豊後の国に美女がいた。この女の許へ一人の男が夜な夜な通うほどに女は唯ならぬ身になった。そこで母は娘に男の名を尋ねた。しかし娘は何処の誰か知らなかった。娘は母に教えられた緒環の糸の端に針をつけ、それを帰り行く男の狩衣の襟にさした。間もなく夜が明けた。娘は侍女を連れてその糸をたよって進んだ。糸は豊後と日向の境にある嫗嶽(うばだけ:祖母嶽ともいう)の裾の大きな岩屋の中に入っていた。そして奥からは大きなうめき声が聞こえてくる。娘は「貴方の姿を見ようと思いここまで来ました」と言った。岩屋の中からは苦しげな声で「もしそなたが我が姿を見たら魂も身も添うまい。胎んだ子は男子で、弓矢、打ち物を執っては九州に肩を並べるものはなかろう。」といった。「娘は例えどんなお姿であろうと今一度お会いしたい」と言った。「それでは」と言って岩屋の中から15丈もありそうな大蛇がのたくり出た。二人の侍女は驚き恐れて逃げ走ったが、路の途中で死んでしまった。襟に刺したと思った針は大蛇ののど笛に突き立っていた。鉄は大蛇の大毒、大蛇はそのために死にかけていたのだった。女は我が夫の浅ましい姿を見届けて家に帰った。そして間もなく男の子を生んだ。弘仁2年3月5日であった。女の祖父がその子を預って育てた。子供は体が大きくて顔が長く、夏でも手足にアカギレが出来ていた。この大蛇の子が豊後緒方維基で、その長子が政次であり、政次は日向の高千穂に入り、三田井氏の祖になったと言われている。この大蛇の伝説は書物によって多少の相違がある。それらの中に大蛇は祖母嶽明神であるという伝えもある。

三田井氏の墓・・・三田井氏歴代高千穂太郎の墓がある。

引用:日向の伝説(鈴木健一郎)

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