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まま子滝伝説

この滝の近くに、若いきこりの夫婦が住んでいて、彼らには一人のかわいい女の子があった。訪れる人とて無い、この寂しい山の中の一軒家で、親子水入らずの三人の生活はとても楽しいものであった。しかしその幸せな生活も長くは続かなかった。美しい妻は、ふとした病がもとで、まだ幼い娘を残してこの世を去った。平和で楽しかった彼らの生活は、一瞬にして壊されてしまった。深山のきこりの仕事は、あまりにも過酷で、幼い 娘を連れての労働は無理だった。そこで男はやむなく後妻を迎え入れた。

娘はやがて成長し、5歳になったが、後妻はこの娘が邪魔で仕方がないので、何かにつけていじめていた。娘にとって頼りの父親は、毎日朝早くから夜遅くまで山仕事で、娘をかまうゆとりが無く、娘としては義母と一緒に終日暮らすほかはなかった。「母さえ生きていれば」娘は何度となく枕を濡らしていたが、ある夏の昼下がりのことであった。野良仕事を終えた義母と娘は、滝の上の岩に並んで滝を見下ろしていた。いつもは娘をいじめる義母も、不思議と今日は言葉も優しく「しらみを取ってやろう」と娘を抱き寄せ、その髪をすき始めた。幼い娘には義母にある夜叉の心など知るべくも無かった。すぐ目下には幾十尋という断崖を轟音とともに滝が流れ落ちている。初めての義母のやさしい態度に娘は喜び、無意識に自分の帯を義母の帯にしっかりと結び付けていた。

その時であった。頃を見はからった義母は、うれしそうに自分の膝に寄り添っている娘を、満身の力を込めて懸崖に突き落とした。しかし千尋の滝に落ちていったのは、娘だけではなかった。もんどりうって落ちていったのは、いたいけな娘と、娘をこよなく憎む義母(まま母)の二つの塊だったのである。 二人の供養のため、滝の近くに二体の観音像をまつった。この観音にちなんで「観音滝」とも呼ばれるようになった。

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